アブダビは、アラブ首長国連邦(UAE)の中で、面積も経済規模も最大の首長国。石油資源が豊富なことでも知られています。アブダビといえば、リゾートというよりは、奇抜なデザインの超高層ビル群が思い浮かぶように、貴重な長期休暇を使って行く旅行先ではないイメージです。でも、アブダビに行きたい理由が2つありました。その1つがシェイク・ザイード・モスク。(もう1つはルーブル・アブダビ美術館。)ある3連休の週末に、思い切って弾丸旅行で訪れました。
モスクの魅力 – 生きているアートがある場所
2007年の完成以来、シェイク・ザイード・モスクはアブダビを代表する観光スポット。建築総工費は550億円、建築期間は10年間。白亜の大理石、82個のドーム、1,000を超える柱、幾つものスワロフスキー製のシャンデリア、世界で最も大きなハンドメイドのペルシャ絨毯--このモスクについて語られる時には、豪華さと壮大さを表現する言葉が並びます。でも、このモスクを訪れたかった理由は、それだけではありませんでした。
私は20代前半に中東をバックパックで旅行して以来、イスラム・アートの美しさの虜になりました。特に、モスクにはイスラム・アートが凝縮されていて、建物の外装や内装を見ているとあっという間に時間が過ぎます。イスラム・アートは、今も進化し続ける数少ない宗教芸術のように思います。多くの場合、仏教寺院やキリスト教会は、古いものを守り、“変わらない”ことに価値があって、実際、ある宗派の建物ならどの場所でもどの時代のものも割と同じようなスタイルです。その点でモスクは違うような気がします。その時代や場所ごとにいいものをどんどん取り入れて、変わることに躊躇がないというか、むしろ新しくあり続けることで“生きているアート”のようです。
古今東西の美のフュージョン、でもシンプル
シェイク・ザイード・モスクのデザインには、世界の様々な地域と時代の伝統的なイスラム・アートの様式が採用されています。UAE建国の父で、このモスクを建てたザイード・ビン=スルターン・=アール=ナヒヤーンが掲げていた「unite the world(世界はひとつ)」を体現しているのだそうです。例えば、広大な中庭の四隅に建つミナレットには、4つのスタイルが用いられていて、下から1つ目の正方形のセクションには、地中海のイスラム建築を代表するMoroccan-Andalusian-Mamelukeスタイル、2つ目の八角形のセクションはエジプトなどで発展したMamlukスタイル、3つ目の円柱形の部分はイスタンブールなどに見られるOttomanスタイルです。最上部の明かりを灯す台には、ファーティマ朝に由来するモザイクがあしらわれています。これらの4つのスタイルが違和感なく”unite”されていました。
大理石の柱が続く廊下には、タージ・マハールなどを代表とするインドのイスラム建築の影響が見られました。
礼拝堂にも贅を尽くしたアートがたくさん
ムスリム教徒ではない訪問者も、礼拝堂の一部に入ることができます。幾重にも連なるアーチの中に吊り下げられているのは、スワロフスキーのシャンデリア。大きなものは、直径10m、高さ15mで、重さ12トン! 個人的に好きだったのは、入り口にあった小さめのもの。ブルー系の色が使われたシンプルなデザイン。
ライトアップされたモスク
夕方になると、モスクはライトアップされて違った雰囲気に包まれます。ライトの色は、月の暦によって変わっていくのだそうです。