2005年に新疆ウイグル自治区を旅行した時に楽しかったことのひとつは、旧市街(オールドタウン) の散策。ウイグル族の人たちが住むエリアには、狭くて曲がりくねった通りに、土壁と泥レンガの家が並んでいます。
レンガに施された幾何学模様。木の彫刻が美しいアンティークの扉。イスラム・ブルーと黄色と緑のタイルが映えるモスク。どの観光地よりも、本来のウイグル建築のデザインを見ることができる場所かもしれません。
旧市街では、タイミングが良ければ、ウイグルの人たちの生活を垣間見ることもできます。通りで遊ぶ子ども。ロバに荷物をひかせているおじさん。焼きたてのナンのいい香りでいっぱいの街角。モスクの前で静かにおしゃべりしている人たち。何気ない日常の景色が広がります。
特におすすめなのは、カシュガルとヤルカンドの旧市街。狭くて静かな路地を散策しているとあっという間に時間が経ちます。カシュガルのエイティガール寺院のあたりではミナレットからアザーンが聞こえてきて、目の前の景色がより異国に見えました。ヤルカンドでは、どんどん細くなる曲がりくねった路地を進んでいると、スローモーションの中にいるような感覚におちいりました。
この記事では、ウイグルの旧市街を紹介。
旧市街の路地
照りつける無色の太陽の光と、土壁と通りにできた影のコントラスト。
路地が細くて曲がりくねっていて、迷路のようなところもあります。
家の玄関には、色鮮やかな木彫りの模様。
焼きたてのナンのいい香りでいっぱいの街角。
世界中のどこでも、イスラムの建築のデザインって、さりげなくてセンスがいい。路地にある小さなモスクには、これといって目を引くような派手さはなくても、壁やミナレットのドームに施されたイスラムの幾何学模様や、入り口のアーチの形など、ひとつひとつのパーツがセンスよく配置されていて、街並みにしっくり馴染んでいました。
散策中にアザーンが聞こえて、目を上にやると、肉声のアザーンでした。びっくりするほどよく通る声。
モスクの前でおしゃべりする地元の人たち。
子どもたちはどこでも好奇心いっぱい元気いっぱい。私の肩にぶら下がるカメラを見つけると、撮って!撮って!とポーズをきめて、私が旧市街を出るまでずっとついてきました。
カシュガルでは、旧市街地を通り抜けると、のどかな田園風景が広がっていました。ポプラ並木は、シルクロードのイメージそのまま。ロバに荷台を引かせるおじさんは、すれ違う時に「乗っていく?」と声をかけてくれました。
追記:最近のニュースで、カシュガルやヤルカンドの旧市街の伝統的な家屋が取り壊されて、新しい街になったと知りました。ウイグル・スタイルのデザインの一部は再現されたとのことですが、私が旅行した時とはだいぶ違う景色になったそうです。旧市街で暮らす人たちにとって、あの素朴で居心地がいい街角に代わる場所なんてきっとない。ウイグルに関するニュースを見る度に心が傷みます。