2003年にチベットをバックパック旅行した夫から、チベットの道路事情の悪さを何度となく聞かされていました。道中の景色は最高に美しいのだけど、舗装されていたとしてもでこぼこで、お尻が痛くなり、空気が薄い上に酔って、しかも時間がかかる、最悪だと。でも、2019年にチベットを訪れた時には、道路事情はばっちり。車での移動は快適でした。そして、車の窓から見えた景色は最高。ドライバーさんに、「写真を撮りたいからちょっと止めて!」と何度お願いしたことか。チベット旅行の思い出のひとつは車の窓の外に流れる景色だったと言っても、過言ではないかもしれません。
ラサからギャンツェまで:ヤムドク・ユムツォ(湖)とカロー・ラ氷河
初めてラサ市外に足をのばしたのは、ギャンツェとシガツェまで移動した日。初めての長距離移動だったので、夫に聞かされていた最悪の道路事情に備えて、音楽を聞けるように携帯はフルチャージ、おやつのスナックをしっかり用意。でも、舗装道路は快適で、道中の景色は最高。車の移動で一日を過ごしても退屈することはありませんでした。道中のひとつめのハイライトは、ヤムドク・ユムツォという湖。ラサから車で2時間半のところにある 4,770mのKampala Passという峠から一望できる湖で、チベットの聖なる三大湖の一つだそうです。ガイドさんによると湖は空の色を映すそうで、私たちが訪れた日は、湖は真っ青な空を映して深いターコイズ色でした。
峠の上からは波風のない静かな湖に見えましたが、峠を下って湖畔に着くと、強い風で湖のには荒波がたっていました。それでも、波風があっても湖底が見えるくらい透明な湖水。湖畔には、記念写真のお供用におしゃれをしたヤクがいて、思わず記念写真を撮ってしまいました。普段は観光地でこういうことをしない私たちですが、この日は最高な天気と美しい景色で、つい気持ちがうかれていたみたい。
カロー・ラ氷河
ヤムドク・ユムツォ(湖)を過ぎて1時間半後、カロー・ラ氷河に到着。その時ちょうど、ラッキーなことに雲が晴れて遠くの氷河がきれいに見えました。
道中で垣間見るチベットの暮らし
道中では、チベット仏教の祈りのサインをあちこちに見かけました。そのひとつは「マニ」というマントラ (チベット仏教の祈りの言葉)が描かれている丸み帯びた石が積み上げられた小山。健康や平和への願いが込められた小山は、村の外れや丘の上や峠などあちこちにありました。
道中、車を止めて、家畜の群れが通り過ぎるのを待つことがよくありました。そんな時は、私たちも車を降りて薄い空気を肺にいっぱい取り込みながら、家畜のオーナーとガイドさんと話しながらゆっくり歩きました。
道中のおやつ
もう一つの道中の楽しみは、おやつ。ガイドさんは、ジャガイモを揚げてチリと塩をふりかけた「チリポテト」が大好物で、良さそうな屋台を見つけと買ってきて、コンソールボックスの上に置いてくれました。ついつい手を伸ばしてしまうので、最後には「もうポテトはコンソールボックスに置かないで!(笑)」とお願いしてました。
途中で立ち寄ったシャル―修道院
言うまでなくチベットには多くの仏教寺院や修道院があります。あらかじめガイドさんに途中でいくつかのお寺に寄ってほしいとお願いしてあって、連れて行ってくれたお寺のひとつがシャル―修道院。もともと11世紀に建てられた寺院で、14世紀の大地震の後に元朝の支援で大規模な改築が施されました。その時、建築様式は中国元朝の影響を受けたため、他のチベット寺院と違って、屋根の形が両端に向かって反っていたり、青いタイルが随所で使われているのだそうです。
修道院の一角に、いにしえの人たちの生活の様子が垣間見える部屋がありました。そこにある彫刻からは、何百年も前から中国の王朝との行き来があったことが伺えます。
14世紀の改築後、シャル―修道院は、参拝などのための寺院ではなく、専らチベット仏教を学ぶ寺院としてチベット中に影響を持つ寺院になったそうです。修道院の中の多くの部屋には、その頃からの書物がたくさん積み重ねられていました。
以上が、ラサからギャンツェとシガツェまでの道中の景色でした。
ヤムドク・ユムツォ(湖): ラサからギャンツェの途中、ラサから車で2時間半。Kampala Passという峠のあたりに幾つかのビューポイントがある。
カロー・ラ氷河: ヤムドク・ユムツォ(湖)から、ギャンツェの方向に車で1時間半。高速道路の脇にビューポイントがあるので、15-30分の小休憩で見ることができる。
シャル―修道院: シガツェから車で30分。中を見て回るのに1-2時間ほど。