中国の北西にある新疆ウイグル自治区は、中国最大の自治区及び省。広大な大地に、多様な民族と文化が共存し、美しい自然の景観が広がり、そして多くの古代シルクロードの遺産が残っています。この記事では、私が2005年にウイグル自治区を旅行した時に、行ってよかった場所&してよかったことを紹介します。
新疆ウイグル自治区の旅行で行くべき街
新疆ウイグル自治区の旅行計画はなかなか悩ましい。魅力的な観光地が広いエリアに散らばっていて、多くの場所に行こうとすると移動時間がやたら長くなって、肝心の観光に使える時間が短くなる。という感じで、悩みに悩んでウイグル旅行の計画をたてて、実際に旅行してみて自信をもって言えることがふたつ。
ひとつは、必ずしもメジャーな街を全てまわらなくてもOKだということ。もうひとつは、街から街へ急いで移動するより、一つの街にじっくり時間をかけた方がいいということ。
極端な話、カシュガル、ヤルカンド、トルファンの3つの街さえおさえたら、「シルクロードの雰囲気満載のバザール(市場)」、「ウイグルの人たちの旧市街(オールドタウン)」、「シルクロードの遺跡」、そして「美しい自然の景観」をばっちり見て回ることができます。
具体的には、カシュガルとヤルカンドで行けば、バザールとウイグルの人たちの居住区とメジャーな遺跡をカバーできます。さらにカシュガルは、カラクリ湖への起点。カラクリ湖周辺と、湖までのハイウェイで美しい風景を楽しめます。トルファンは、多くのメジャーな遺跡への起点。さらに、この3つの街の間の長距離移動の道中には、美しい自然の景観が続きます。
もう少し日にちがあるなら、新疆の入口であるウルムチの滞在を長くしたり、行き先にクチャを追加するのもありですが、おすすめは、カシュガル、ヤルカンド、トルファンの滞在を長くすることです。
新疆でおすすめの場所とアクティビティ
新疆(ウイグル)で行くべき場所とおすすめのアクティビティは8つ。上述の通り、カシュガル、ヤルカンド、トルファンの3つの街を旅程に入れれば、この8つの場所&コトをカバーできます。
- シルクロードの雰囲気が残るバザールを散策する
- ウイグル族の人たちが住む旧市街を散策する
- カラクリ湖と、カラコルム・ハイウェイに広がる景色を見に行く
- 蘇公塔を訪れる
- 古代都市跡を散策する
- モスクと廟を訪れる
- 仏教の石窟寺院を訪れる
- ウイグルの郷土料理を食す
1. シルクロードの雰囲気が残るバザールを散策
新疆(ウイグル)では、どこに行ってもシルクロードの雰囲気があります。特に、バザール(市場)は最高にシルクロードのバイブでいっぱい。新疆内はもちろん周辺の国から集まった商人が、買い物客と交渉する声と熱気。その中を歩くと、シルクロードは古のコトではないような感覚になります。
どの街にもバザールがありますが、特に、カシュガルとヤルカンドのバザールはおすすめ。カシュガルのバザールは日曜日、ヤルカンドのバザールは土曜日と日曜日に大きくなります。その日には、一日かけても見れ回れないほどお店が出て、たくさんの売り手と買い手で賑わいます。
バザールの醍醐味は、売り買いされているものを通して現地の生活を垣間見れること。バザールの端っこでヘアカットや髭カットをしてたり、電化製品を修理してたり、馬やロバの蹄のメインテナンス屋さんまであります。
お父さんが商談中に、ロバのしっかり手綱を握っている男の子。事情を解したロバが、優しい表情で寄り添っているのも微笑ましい。
生地の売り場は、「シルクの道」という言葉通り、シルクロードを彷彿とさせます。売り手は、買い手が納得する生地を見つけるまで、幾つも何度も布を広げます。
バザールでは屋台も見どころ。商人と買い物客が入れ替わり立ち替わりやって来て、エネルギーをチャージしてました。
街中の屋台よりローカルな料理がいっぱい。こちらは、羊の頭と内臓の煮込み料理。
2. ウイグル居住区を散策
新疆(ウイグル)旅行で楽しかったことの一つは、ウイグルの人たちが住む旧市街(オールドタウン)の散策。
伝統的な土壁の家が並ぶ狭い路地には、あちこちにウイグルの伝統的なデザインが散りばめられています。幾何学模様が埋め込まれた土壁。経年を感じさせる彫り物の木の扉。イスラム・ブルーと緑と黄色のタイルがまぶしいモスク。
路地では、ウイグルの人たちの生活を垣間見ることもできます。路地で遊ぶ子ども。ロバに荷物を運ばせるおじさん。パン屋からは香ばしいい香り。モスクの前でおしゃべりするおじさんたち。
特に、カシュガルとヤルカンドのウイグル居住区はいい感じでした。迷路のような路地を散策すると、あっという間に一日が過ぎます。
ローカル・モスクは、小ぶりながら、壁には伝統的なイスラム・アートとウイグルのデザインが施されています。
子どもたちは好奇心いっぱい。私の肩にぶら下がったごつい一眼レフを見るや、写真を撮って!とポーズを取って、どこまでもついてきました。
3. カラクリ湖と、カラコルム・ハイウェイに広がる景色を見に行く
新疆(ウイグル)では、どの陸路の長距離移動でも、窓の外には美しい景色が広がります。最も美しかったのは、カシュガルからカラクリ湖に続くカラコルム・ハイウェイ。
道中の景色は、赤みがかった岩山、万年雪をかぶる山、周りの山々を映す湿原、緑の木々の間を蛇行する川、と景色がどんどん変わります。目的地のカラクリ湖は、濃いエメラルド色に輝いていました。カシュガルからカラクリ湖までは片道5時間。一日がかりになりますが、行く価値はあります。
車の窓の外に広がる景色はどんどん変わります。5時間のドライブで退屈することはないはず!
道中、羊の群れが登場。通り過ぎるのを待ちます。
カラクリ湖の手前では、青い空を映す湿原が続きました。
野生のラクダの群れに出くわすこともありました。
4. 蘇公塔(そこうとう)
蘇公塔(そこうとう)は、新疆(ウイグル)に残る遺跡の中で特におすすめ。高さ44mのミナレットと、その横には今も使われているモスクがあります。イスラムの伝統的なデザインにウイグル色が加わった新疆イスラム建築様式の建造物。ミレットは間近で見ると迫力があります。茶色のれんがと乾いた空の青色のコントラストが美しい場所です。
5. 古代都市跡を散策する
新疆(ウイグル)は、歴史を通して様々な王国や帝国に統治されました。その時代時代の古代都市があちこちに残っています。旅程には、そのうちの少なくとも一つを入れるのがおすすめです。
個人的に一番良かったのは、寺院や仏塔の保存状態が良い高河故城(交河故城)(トルファン)。広大な土地に残る古代都市は、徒歩で回る必要がありますが、家屋や僧院や行政に使われた建物が並ぶメインストリートを歩くと、どれだけ賑やかで栄えていたのかと想像がふくらみます。特に、101の仏塔は圧巻。敷地内の一番奥にありますが、歩いていく価値ありです。
もし古代都市に興味があるなら、スバシ故城(クチャ)と高昌故城(トルファン)も面白いと思います。スバシ故城の寺院遺跡は見ごたえがありました。
6. モスクと廟を訪れる
新疆(ウイグル)の旅行中には、あちこちにイスラム信仰のサインを見かけます。人々が着る服や帽子やスカーフ、料理、家の飾りはもちろん、モスクや廟に行くと、あの美しいイスラム・ブルーのデザインでいっぱいです。青に加えて黄や緑を使うのが、ウイグルのデザインの特徴です。
アパク・ホージャ(カシュガル)。新疆イスラム教白帽派の指導者アパク・ホージャと家族の陵墓は、特に美しい廟のひとつ。多くの人がお参りに来ていました。
もう一つのおすすめは、カシュガルにあるエイティガール寺院。新疆大規模を誇るモスクで、黄色い建物が、深い緑と青い空に映えます。500年という歴史の長さを感じさせないのは、きっと、今までずっと礼拝に使われているから。ウイグル最大のこのモスクには、平日には2000-3000人、金曜には6000-7000人が礼拝に訪れるそうです。
最後に、旅程さえ許せば、トルファン滞在中にトゥヨク村(トルファン)に足を延ばしてみてください。トルファンの主な見どころは郊外にあるし、市内は当局の監視とコントロールがあからさまで雰囲気が悪いので、市内で過ごす時間は最小限にするのがおすすめですが、ここだけは時間をつくって訪れてもいいかもしれません。村の境界のどこで車から降りても、ウイグルの伝統的な土壁の家が並ぶ狭い路地を歩けば、このモスクにたどり着きます。4つのミナレットが並んでいるのが特徴的なモスクです。
7. 仏教の石窟寺院を訪れる
新疆(ウイグル)には、中国の他の州と同じように、歴史的に重要な仏教の石窟寺院がいくつか残っています。
中でもおすすめなのは、石窟の数が最も多いと言われる、ベゼクリク千仏洞(トルファン)。多くの壁画は、この地域に入ってきたイスラム教と外国人探検隊によってはぎとられてしまい、公開されているのは一部。とは言え、保存状態が良いものもありました。いくつかの壁画は北京の博物館に展示されているそうで、行って見てみたいと思うほどきれいでした。
そして、もし旅程に余裕があれば、ふたつめにおすすめなのがキジル千仏洞(クチャ)。つくられたのは3世紀頃で、仏教の石窟寺院の中でもごく初期の頃のものだそうです。
どちらの石窟寺院も、急な崖の中腹に建てられています。その丘からの景色も素晴らしくて、渓谷を蛇行する渓流とポプラの木々、はるか向こうには天山山脈や赤い山が見えました。
7. ウイグルの郷土料理を食す
最後に、ウイグルの郷土料理。最高に美味しいので、旅行中は、中国の他の州でも食べられる中華料理ではなく、郷土料理を食べるのが絶対です!ウイグルの郷土料理は、ウイグルでしか味わえません。新疆旅行後に、「ウイグル料理」の看板を出すレストランに何度か行ったことがありますが、現地で食べた郷土料理とは程遠い味でした。
ウイグルの郷土料理は、中国の他の地方の料理と全く違って、むしろ中央アジアの郷土料理に似ています。よく使われる食材は、ラム肉、牛肉、クミンとチリ。鶏肉、人参、トマト、玉ねぎ、那須、バターと果物もよく使われる食材です。ラム肉好きにとっては、新疆(ウイグル)は最高の旅行先です。もしラム肉がそれほど好きじゃなかったら、きっとラム肉好きになります。(私がそのパターンでした!)
旅行中に絶対に食べるべき料理トップ3はこちら。(ウイグルの郷土料理について別の記事で詳しく書いたので、興味があればこちらをどうぞ。)当時は予算かつかつのバックパッカーだったので、屋台や市場で食べることが多かったのですが、レストランに行こうと思ったことはないくらい最高に美味しかったです。個人的には、カシュガルとヤルカンドが特に美味しい街でした。
おすすめの郷土料理のトップは、ラグメンというイスラム風うどん。麺のコシは、日本でもめったにおめにかかれないくらいもっちもち。ラム肉のソースは、ラム肉のうま味と野菜の甘みがでているラグーに、クミンのパンチがよく効いていて、いうことなしの一皿です。
新疆(ウイグル)でサモサといえば、ラムのひき肉を、甘くなるまで炒めた玉ねぎと一緒にパン生地に包んでオーブンで焼いた焼きパンを指します。焼きたてのパンの中は肉汁でいっぱい、外はカリッカリ。屋台で焼きたてを見つけたらその時が買い時です。
詰め物の肉は、クミンや黒コショウなどのスパイスで味付けされていて、ラム肉の肉汁を重く感じることはなく、むしろクミンの香りでペロッといけます。小腹を満たすのにちょうどいいサイズなので、長距離バスに乗る前などに屋台で1-2個買っておやつにしていました。
ポロ(ウイグルのピラフ)も、一度食べたら病みつきになる一皿。ラム肉、人参、玉ねぎとチリを、お米と水を加えて煮た後、蒸らしてつくる炊き込みご飯。
ラムの脂をたくさん使って料理したなら、さらにうま味が増します。脂が美味しい一品なのでお腹にずっしりきますが、一度食べ始めたら完食してしまうはず。
屋台で食べるなら、ランチ時間にしか出さないお店が多いので注意。食べた後は、市場や遺跡をたくさん歩いてカロリーを消費しましょう!