メルヴは、トルクメニスタン旅行のハイライトの一つ。かつてシルクロードで、ペルシャと中央アジアを結ぶ重要な中継点。メルヴにたどり着くのはそう簡単ではないのに、トルクメニスタンを訪れる多くの人がここを目指すらしい。この場所を特別にしているのは、この都市のかつての発展の仕方。今までに古代都市と言われる場所を訪れた人ならきっと、“新しい支配者が、以前の支配者が築いたものをすべて破壊して、その上に新しい都市を建てる”というストーリーにお馴染みのことでしょう。この街ではそれは起きなかったのです。
メルヴでは、古い町が棄てられると、その上にではなく、隣接して新しい町がつくられました。そのため、5つの異なった時代に築かれた町を同時に見ることができる、というのがこの街を訪れる理由。その事実は、シルクロードの貿易から得られる利益が、一人の支配者の“自分の支配力を示したい”というエゴを凌駕していたことの証拠。この広大な都市に、ペルシャ、アラブ、トルコ、モンゴル、ウズベク、スグド、そしてアジアの各国からの商人がひしめていたことを想像するだけでちょっと盛り上がりませんか?(私だけかな?)この都市は、地球上で最古のメトロポリタンだったんじゃないかと思えてきます。
メルヴへの道のり。それは埃と凸凹の道。
メルヴへ道のりは遠い。まず、トルクメニスタンの首都ガバッドの東約300㎞にあるマーリに行き、そこから40㎞東に進みます。40kmといえど、その道のりは凸凹で何度も腰を車のシートに打ち付けながら遅々と進みます。でも、窓から見える景色は素晴らしかったです。こちらは、道いっぱいに広がる羊の一群と、そのボス。
最も古い城壁、エルク・カラとギャウル・カラ
メルヴに残る最古の遺跡は青銅器時代にさかのぼります。この地域ではゾロアスター教が最古の宗教で、エルク・カラとしてケメネス朝(紀元前6-4世紀)時代のドーナツ型の城壁が残っています。城壁のてっぺんに登ると、このドーナツ型の城壁をほぼ見渡せます。
その南方に位置するギャウル・カラは、全方位を2kmあまりの城壁で囲まれています。発掘調査で見つかった多くのモノが“様々なカルチャーとしきたりが共存”していたことを示すそうです。例えば、モスク、ゾロアスター教の寺院、キリスト教だけでなく、仏教寺院が同じ時代に存在した形跡など。
壮大なキズ・カラ
そして、こちらが敷地内で最も元の姿かたちが残っている、キズ・カラと呼ばれる2つの城跡。8-9世紀にさかのぼるこの建物は、中央アジアの他には見られないユニークな建築スタイル。キズ・カラというのは「乙女の城」という意味。支配者が政治の指揮をとった建物とも、奴隷の娘たちをはべらせたパーティーが催された場所とも言われているそうです。
イスラム学芸の結晶
もう一つ原型に近い形で残るのは、スルタン・カラと呼ばれる城壁内にある、スルタン・サンジャール廟。その当時、メルヴはセルジューク朝の首都で、経済的中心でありながらイスラム学芸の中心地だったとのこと。スルタン・サンジャール廟の外見は、立方型の基盤にドームが乗っているというシンプルな2層構造。内部のドーム部分には、かすかに残る手がかりを元にした修復を経た装飾が施されています。
メルヴの敷地内には、他にも見どころが残っています。ただ、見ただけでは何なのか分からないほど風化しているものがほとんど。敷地内のドライブ中に小高い丘に登ってカラ(城壁)の全体を見渡せば、幾つもの時代を経ながらカラが隣接し合っていた形跡を見ることができます。最後に、メルヴに存在する“現代の”モスク。今日のトルクメニスタン・スタイルの装飾が施されています。このモスクも、後世にはいくつも残るカラのひとつになるんでしょうか。
アクセス:メルヴへの起点となるマーリは、トルクメニスタンの首都アシガバッドから国内線で行くのが便利。マーリからメルヴまでは40㎞。1日がかりの日帰りトリップです。広大な敷地に見所が散在しているので、いろいろ教えてくれるガイドさんを雇うことをお勧めします。
過ごす時間:マーリから往復と見学時間を含めて、半日で行くことも可能。でも、マーリの街自体に見所が少ないので、1日たっぷりをメルヴ観光にあてるのがおススメです。