カンタナガル寺院(カントノゴル寺院)は、今回の旅行の中で特に楽しみにしていた行き先のひとつ。
バングラデシュの最北にあって、ダッカから車で1日以上かかる場所ですが、どうしても行きたかった理由は、バングラデシュの観光開発の仕事をしていた知人が、「バングラデシュで次に世界遺産に認定される遺跡があるなら、それはカンタナガル寺院」と言っていたから。彼曰く、ベンガル地域で発展したヒンズー建築の中でもとりわけ美しい寺院とのこと。もう一つの理由は、ナヴァ・ラトナ型のヒンズー建築を実際に見てみたかったから。
田園風景の中をゆく、カンタナゴルへの道
カンタナゴル寺院がガイドブックでハイライトされているのにも関わらず、訪れる旅行者が少ないのは、ダッカから相当離れているのに加えて、周辺に見所が少ないから。実際にカンタナゴル寺院に近づくにつれて、エクスカーション的に立ち寄る場所の数は減っていきました。
当日は、朝にディナジプールにあるホテルを出て、いくつもの村を抜けて、田園風景の中をひたすら車を走らせました。田園風景は美しく、すれ違う人たちはみんな爽やかで元気。すれ違う時に「ハロー」「アッサラーム」って声をかけてくれました。
カンタナゴル寺院の周辺には、青々としたタバコのプランテーションが広がっていました。
細やかで活き活きとした彫刻で覆われたテラコッタ寺院
カンタナゴル寺院は、広大な田園の中に突如として現れます。その姿は、ダッカからボルガの間に訪れたどの寺院とも全く違いました。
元々は18世紀にさかのぼるテラコッタでできたヒンズー寺院。19世紀の大地震で上層部にあった9つの小塔が崩れてしまい、今は写真のように正方形の3層建て。
寺院のデザインは幾何学的秩序に則っているところにイスラム建築の影響を受けているのが分かります。正方形の上層部のアーチが美しく、それがこの地域の特長なのだとか。
建物のすべての面が、細かいレリーフで覆われています。遠くから見ても、近くで見ても美しい。
お参りする人で賑やかな境内
私がカンタナゴル寺院を訪れた日は、私が唯一の外国人訪問者。ビジター・ブックには、3日前に1人のイギリス人が、9日前に1人の中国人が訪れたことが記録されていました。
境内には、国内から訪れたヒンズー教徒が大勢。今日、バングラデシュではヒンズー教徒はマイノリティですが、あちこちに巡礼のサインがあり、厚く信仰されていることが分かりました。
建物の4面に刻まれたレリーフはすべて違っていて、見ごたえがありました。神話「マハーバーラタ」や「ラーマーヤナ」などをモチーフにしている一方、当時の人々の生活も活き活きと描かれていました。この船のレリーフからは、かつてからこの辺り一帯が河川で覆われた土地だったことが分かります。
別の一角には、戦いや狩猟、または王族の行進の様子が活き活きと描かれていました。像や、馬、ムガル衣裳をまとった人が乗ったラクダなど、当時、他の地域との交流があったことが伺えます。他には、畑作業や家事、結婚式や祭りなどの人々のシーンを描いたレリーフもありました。
境内をじっくり見て回って60分ほど。外に出ると、巡礼後の人々がお茶や軽食をとりながらのんびりしている景色が広がっていました。
アクセス:カンタナゴル寺院を訪れる前日は、夕方前にディナジプール入り。ディナジプールからカンタナゴル寺院まで車で40-50分。
過ごす時間:30-60分かそれ以上
旅のキーワード: ヒンズー寺院、ベンガル建築