ウズベキスタンへの旅行を計画する時に湧く疑問のひとつはきっと、サマルカンド、ブハラ、ヒヴァの3つの街すべてを回るべきかどうか、だと思います。私たちも同じことを悩んで、結局3つの街を訪れました。結論から言うと、3つの街で見れるものが全く違うかというとそんなことはないけれど、3つの街はそれぞれ違って、それがよかったです。
日本の歴史都市に例えるなら、サマルカンドは豪華絢爛な安土桃山、ブハラはわびさびの室町、ヒヴァはよく都市計画された近代の古都、という感じです。この記事では、3つの街を簡単に紹介します。もしウズベキスタンへの旅行を予定しているなら、ぜひ参考にしてください。
すべてが大きくて豪華絢爛なサマルカンド
サマルカンドのメインの見所は、どのガイドブックでも必ずハイライトに挙げられているのレギスタン広場。サマルカンドのアイコンです。
レギスタン広場には、ウルグベク・メドレセ、シェルドル・メドレセ、ティラカリ・メドレセの3つの建物が並んでいます。外見からはそれぞれは似ているように見えますが、建物の中に足を踏み入れるとそうではないことに気づきます。私たちは、3つの建物を見て回るのに2時間くらいかかりました。
こちらは、シェルドル・メドレセの正面アーチ。左右対称の青と黄色のコントラストが美しいデザインです。ザ・ウズベキスタンの色使い。
一方で、ティラカリ・メドレセの内部のドームは、金と青をベースにしたデザイン。この建物内には、オリジナルの建物の装飾品などが展示されているので、ぜひ立ち寄ってみてください。展示品が、あの美しい「ウズベク・ブルー」は古から存在していたことの証拠です。
サマルカンドのシャーヒズィンダ廟群は、ブハラやヒヴァにはない建物群です。ここには中小様々な規模の霊廟が一直線に並んでいます。それぞれの霊廟の内部のドームのデザインを見て回るだけで、ここでも1-2時間があっという間に過ぎます。
サマルカンドの外れに足をのばして、オリジナルな雰囲気が残る場所
さて、サマルカンドでこれらのハイライトを回った後には、その素晴らしさに感動しつつも、これらの建物がかなり本格的な修復を経たことは明らかで、オリジナルな感じが残る建物を見てみたくなりました。(ちなみに、ウズベキスタンの歴史的建物の修復のレベルはとても高いです。他の国で時折見る、モルタルと鉄筋でがっちりら固めるという荒業の修復は見かけませんでした。)
それで行ってみたのが、イシュラトハナ廟。装飾のほとんどが失われてはいるものの、建物がもつ壮大な雰囲気はばっちり残っていました。
古と今日が共存するブハラ
ブハラはぶらぶら歩きが楽しい街でした。ブハラには、古いものと今のものがいい感じで共存していました。この街にはいつの時代も、様々な民族が東西南北からやってきて貿易を通じて交流していた故に、地元の人々は「自分とは違う何かと」共存するエキスパートになったんだろうなと思うほどです。
それは、この街のアーティストのリベラルなスタイルに如実に表れています。2つの代表作のうちのひとつがディール・ディヴァンベキ・メドレセ。イスラム教義で禁じられている遇郷崇拝(羽の鳳凰が足で鹿をつかみ、人面相の太陽に向かって飛ぶ姿)がダイナミックに描かれています。そして、チョル・ミナルの特長である4つのミナレットは、他の地域では見られないユニークなスタイルなのだそうです。
ミニマリズムな美が凝縮された街
もう一つ、ブハラがステキなのは、建物や町並みの趣味がいいことです。ミニマリズムな美。華やかでシンプル。派手すぎず、エレガントで洗練された感じ。
この街を支配してきた人々は、相当な富を持ちながら「ちょうどいい」という加減を知っていたんだろうなと想像しました。その代表例が、イスマイール・サーマーニ廟(写真下)。単一の色と材料しか使われていないのですが、表面に施された素晴らしい幾何学模様のおかげで古い感じが全くなく、むしろエレガント。
このミニマリズムは、マドラサにも見られます。例えばカラーン・モスクやカラーン・ミナレット。スタンダードなレイアウトは他の街のモスクやマドラサと同じながら、遠くから見るとシンプルで派手さはあまりありません。だからといって単調なデザインだという訳ではなく、近くで見ると細部まで洗練された色使いとデザインであることが分かります。
個人的に特に好きだったのは、アブドゥールアジス・ハン・マドラサ。入り口のペルシアスタイルのデザインが美しくて、いつまでも眺めていられるようでした。好きすぎて、実際にブハラ滞在中の街歩き中には何度も立ち寄りました。他の建物と違って多くの色が使われているのに、全体としてギラギラした感じがしないのです。
シルクロードの近代建築の宝石箱、ヒヴァ
そして、最後にヒヴァ。ヒヴァが他の街と違うのは、“ホントな感じ(authenticity)”。
サマルカンドやブハラがチンギスハンの襲来(13世紀)の前に繁栄のピークを迎えたのに対して、ヒヴァが繁栄したのはずっと後の17世紀。そのため多くの建物が徹底的な破壊を経ないで今に至っていて、オリジナルの状態に近いか、改築された場合でも元々の意図をよく汲んで改築されたからと想像します。
ヒヴァは徒歩で歩き回れるくらい小さい街。小さい道に入っても迷うことはないくらい。ハイライトの建物を訪れながら、カフェやギャラリーに立ち寄ってのんびりするのが楽しい街です。
ヒヴァの「ウズベク・ブルー」はとりわけ美しいです。最も美しいと思ったのは、タシュ・ハウリ宮殿。当時の王アラクリ・ハーンのハーレムだった庭には、王の部屋と4人の正妻と150を超える妾の部屋がひとつの庭を囲んでいます。宮殿の部屋という部屋すべての、青と白をた装飾の壁のデザインが美しい。どのデザインも異なっていて、それぞれに洗練されていて本当に美しい。
以上が、ウズベキスタンの代表的な3つの古代都市、サマルカンド、ブハラ、ヒヴァの紹介でした。旅の計画の参考になれば嬉しいです。